中原中也とは?|愛と魂の詩人が走り抜けた激動の人生
中原中也は「汚れちまった悲しみに」などで知られる詩人です。1907年に生まれ、1937年にわずか30歳で生涯を閉じました。
16歳の頃に女優・長谷川泰子と同棲を始めます。
しかしその翌年彼女は、批評家として有名な小林秀雄のもとへと去ってしまいます。
小林秀雄は中原中也の親友であり、愛する人と親友からの裏切りに、彼の心は激しく動くこととなります。
中原中也はその後他の女性と結婚し、男児が生まれ深い愛情を注ぎます。
しかし、その子は2歳で亡くなってしまいます。
彼は壊れそうな感情の中で我が子への想いを込めた詩を書きますが、その翌年には中也自身もこの世を去りました。
中原中也の名作5選
それでは中原中也の名作を5つ紹介していきます。
「中原中也について知ること」に重点を置き、厳選しました。
1:中原中也全詩集(角川ソフィア文庫360)
こちらは私が非常に気に入っている中原中也氏の全詩集です。
第一詩集「山羊の歌」、第二詩集「在りし日の歌」をはじめ、中学生時代の歌集「未黒野」、未発表詩、各種雑誌に掲載されたマイナー作品なども幅広く網羅されています。
そのため、特に中原中也の詩にはじめて触れる人におすすめです。
もちろん代表作である「汚れちまったかなしみに」も載っています。
少し読み進めるだけで中原中也が、いかに「人間の内面から溢れ出る感情を、繊細かつ激しい言葉として、表に出すこと」に長けた詩人であったのかを痛感できることでしょう。
また、韻を踏んでいる詩も多いですから、言葉がリズムよく心にしみこんでいきます。
2:名言中原中也
こちらは中原中也の「名言」に焦点を当てた一冊です。彼の名言を日記、口癖、親しい人との会話などから見つけ出し、そのエピソードから中原中也に迫るというコンセプトとなっています。
恋人について、母親について、息子について……など、章ごとに中原中也の一面に触れることができます。
特に有名な明言は「フーン」です。
これは冒頭で紹介した彼の恋人だった長谷川泰子が、彼に対して「小林秀雄のもとへ行きます」と言ったときの中原中也の返事です。
「フーン」の三文字にいったいどれほどの複雑な感情がこめられていたのでしょうか。
また、二歳で亡くなった息子についての言葉がまとめられている章では、子への深い愛情と、それを失った悲しみをうかがい知ることができます。
3:中原中也(大岡昇平著/講談社文芸文庫)
大岡昇平は「レイデ戦記」「野火」「俘虜記」などで知られる作家です。20歳で中原中也に出会い、文学について熱く議論する親友となりました。
そんな大岡昇平が色々な角度から、中原中也の不幸や人物像について語っている本です。
大岡昇平は本書において、中原中也と彼の詩を可能な限り客観的に捉えようとしています。
ですが、大岡昇平の主観があちこちで混ざっています。亡き親友へのあふれ出る感情が、ところどころ顔を出しているのです。
これは大岡昇平にしか書けない本であったと言えるでしょう。
4:中原中也との愛 ゆきてかへらぬ
中原中也と一時は同棲までした、女優・長谷川泰子からのインタビューをまとめた本です。
中原中也に関連する文献から、長谷川泰子のイメージもある程度見て取れますが、「潔癖症だった」「天真爛漫だった」など評価は様々です。
そのような中、こちらの書籍には彼女からの直接のインタビューが掲載されています。
そのため、より生々しく長谷川泰子について知ることができます。
先述の通り、彼女は早くに中原中也のもとを去りました。
ですが二人の関係が途絶えたわけではなく、文通をしたり時折顔を合わせたり、ケンカをしたりしながら交流を続けました。
さらに、長谷川泰子が父の無い子を出産したときには、名付け親となり面倒を見るなどしていたのです。
彼女は中原中也のことを「酵母のような人物である」と述べています。
大切ななにかを育てる源泉、思想の源としての中原中也に惹かれていたのかもしれません。
5:中原中也 新潮日本文学アルバム
こちらは他の4冊とは毛色が違い、彼の子どもの頃の写真や成績表、母への手紙などを見ることができる、「資料集」となっています(人気シリーズです)。
中原中也には一つ有名な写真がありますから、それをイメージする方が多いことでしょう。
ですが他にも、幼少期のあどけない様子、少し微笑んだ表情、流し目の中原中也……など様々な写真が残っています。
直筆の手紙や原稿も多く載っています。
たとえば長谷川泰子への手紙では、別の男性との間にできた男児の体調を心配する気持ちがうかがえ、中原中也の無私の優しさを感じ取ることができます。
中原中也について「孤独」「一匹狼」などのイメージを抱いている人も多いですし、実際にそういった側面もあります。
ですが本書などを通じて彼に触れていくと、繊細な心や情熱、そして他者への深い愛情を持つ人物だったということも見えてくることでしょう。
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