donkihote
情緒不安定な、冴えない、ハゲたおっさん。
すこし虚言癖がある。
ロシナンテⅡ世。通称、R2。
鈍崎邦定の飼い猫。相棒。
オッドアイの白猫。
私にとって。 あの場所は 他のどんな場所より 空に近かった。
勝手知ったるだ。 私はそのガラスの棘を引き抜いた。 やはり。鮮血が流れた。 傷は傷のままだった。
漁り火の確かさと心細さと。
心の臓にガラスの薔薇が咲いた。 鮮血を吸った真っ赤な、深紅の薔薇だ。
水面(みなも)に揺れる。 逆さまの世界。
薄墨の雲の絨毯。 三日月の伴奏で。 星座たちが踊るワルツ。
景色が波紋の様に揺らいでいった。
その素晴らしい景色の 数ピクセルかは、バグっていたとして。
洋服に引っ付いた種子(たね)を 僕は迷惑そうに払っていた。 いい。 雑草なんて植物はないわよ。 みんな。それぞれの生命を 一所懸命に生きているの。 それだけは。 忘れないで。
二人で。 影絵をして遊んだ あの夜。