茜空

一本の剣がある。

一本の剣がある。

とても力の強い剣である。

それ故、滅多に使わないようにしている。

僕は密かにエディプスの剣と呼んでいる。

世界には、歴史上でも様々な人達が存在した。

様々な形、生き方、ポリシーがあり、

どんな人生を選んでも、選べなくても、

どこか美しく、どこか哀しい。

だから、比べてはいけないのはわかってる。

でも、生きていて、つらくて、

どうしようもなく弱くなってしまう時がある。

僕もまた醜い酷い残酷な小さい人間なのである。

この剣を抜いてしまう。

この剣を使うと、

確かに少し強くなるように感じる。

ただ、この剣は妖力をもっている。

この剣を使いすぎた人間は

やはりどこかで人生を踏み誤ってしまう。

とても恐ろしい剣なのである。

できるなら、使わないでまっすぐに

まっとうに生きてゆきたい。

それが違う人生を懸命に生きる

他者に対する敬意である。

僕の目下の願いである。



-茜空