昔話を始めたのはコーヒーのカップが
〝空(から)〟になる頃だった。
記憶の眩しさが時計の針を戻そうとしていた。
二人。。。
閉じ込められたガラスのスノードーム。
めぐる。まわる。ただよう。〝光〟。
夕闇にラピスラズリの街灯が明かりを点す。
北風と寒空と二度とは帰らないぬくもり。
「たとえば。。。」とか「もし。。。」とか
そういうことを口にしない。
二人のいさぎよさは。
身体の、意識の、中心で。
〝ぼうっ〟と灯るあたたかさでもあった。
愛おしさは。お互いの大切さは。
時間とともにゆっくりと形を変える。
それは。
透明な天井を突きぬける虹だった。