虹色のスペクトル。
幾多の光線が交差し、
乱反射する空に。
撥条(ゼンマイ)の
捩子(ねじ)を巻く音が
ゆっくりと響いていた。
アダムとイヴが口にした果実の種子は
その固い芽をほどかなかったのだろうか?
それは魔法をかけられた
影絵のような世界の在り方からは
永遠に知り得ることができないような。
そんな理(ことわり)を
孕(はら)んだままだった。
交わり。絡まる。
運命(さだめ)という糸で
あやとりをしていた幼子が
悪戯(いたずら)に浮かべた笑み。
人形の青紫(あおむらさき)の瞳から
溢れ出した海は。
無邪気な悦楽のような
残酷な欲望を満たしていった。
そよ風で揺らめいた木陰の
泥濘んだ土のうえ。
動かなくなった蜥蜴(トカゲ)は
静かに息をしていた。