駆(はし)り続けた。
追いかけてくるエコーに耳を塞いで、
一瞬先で光る残像から逃げ続けた。
流れてゆく、未来、現在、過去。
秒針がスピードを上げて、『今』という檻に、
僕達を幽閉しようとしていた。
誰にも、何にも、捕らわれたくなかった。
僕は僕という容れ物すらも脱ぎ捨てたかった。
其処に安らぎがあるという訳でも無く、
ただ、発狂しそうな程、なにもかも、
『すべて』を否定したかったんだ。
意識の、魂の、自由への渇望。
上がり続ける呼吸や、脈拍が、
苦しく、もどかしかった。
『1』を、在ることを、存在することを、
酷く怯えていた。