青空

なまぬるい汐風に

なまぬるい汐風に

彼女の長い黒髪が揺れた。

これは確かな記憶だろうか?

それとも創り出された空想か?

もう随分と月日は流れた。

取り残されたあやふやな想いだけが、

何処にも辿り着けないまま

僕達を大人に変えた。

今の僕なら、ちゃんと、

「愛してる。」と

言えるかもしれない。

でも結局、それは反則だ。

そんな都合の良い想いは

全てを色褪せさせてしまう。

青い空と蒼い海は

どこまでも、どこまでも、大きかった。

なまぬるい汐風に

彼女の長い黒髪が揺れた。



-青空