茜空

季節は巡るもの。

季節は巡るもの。

虹色のクジラが

青空にぷかぷかと浮かぶ、

その『絶望』を

飲み込もうとしている。

病室の開け放たれた窓から

桜の花びらがひらひらと舞い込んだ。

宝石のような綺麗な瞳(め)をした黒猫が

大通りを渡ってゆく。

帰りたい景色がある。

あの陽だまりの懐かしい記憶。

その反対もまた真であるように、

何人も明日から完全に希望を奪えない。

目前には、現れては、消える白い階段がある。

ふさわしい重力の中、

不確かな、その白い階段を昇る。

子供達が握りしめるクレヲンの先は

きっと未来へと繋がっている。

春。夏。秋。冬。そしてまた、春。

季節は巡るもの。



-茜空