目の前をゆっくりと
舞い散ってゆく花びらが数枚。
その淡い色に心を染められ
それがどんな感情かもわからずに
ただ涙がこぼれた。
その頃、身の廻りには
全てを良い方向に変えようと
笑顔であることで戦っているような
そんな魅力的な尊敬できる娘がいて、
心に欠陥のある鈍感な僕はやはり
一定の距離感で彼女の笑顔の
道化を演じていた。
ただ、彼女に笑っていて欲しかった。
始まらない物語は
いつものように心に傷みを産み、
ただでさえアンバランスな世界を
絶妙なバランスで蝕みつつあった。
軋んだ、悲鳴をあげたこちら側と
素晴らしく規則正しい
それでもナチュラルなあちら側。
僕は一本の桜の木を見上げた。