茜空

晩夏。

晩夏。

黄昏時の夕涼み。

ひんやりと冷たい小川に足を浸していた。

まだ黄緑色の稲穂が風に揺れている。

せせらぎの音とカナカナの鳴き声が

夕闇に沁み込んでゆく。

忙(せわ)しなく

黒翅(くろはね)の蜻蛉(かげろう)が

川面を飛び交っている。

上流から

朽ちた花が一輪、足元を通り過ぎ、

流れの淀んだ所でくるくる回っていた。



-茜空