茜空

…忘れていた…。

…忘れていた…。

逆再生の映像みたいに

地面に叩きつけられた雨粒が

空へと還っていく。

水の形(かたち)。

…ふわり。

浮かび上がる。

たかい、たかい空の、あの虹の

もっと、もっと奥の、その向こう側。

この世界が始まる前に交わされた…

優しい約束。

胸が熱くなった。

…思い出した。

もう一つの呼び名があった。

…涙(ナミダ)。



-茜空