星空

傘を叩く

傘を叩く雨音があまりにも響いたので

僕の意識は遠い郷愁の甘さに滲んでいった。

違うんだ。

それを悲しみという色で汚してしまうのは。

きっとそれこそ

〝すべて〟を台無しにしてしまう。

ただ。アンニュイな甘さだったんだ。

濃いエスプレッソと

ソーサーの端に置かれた角砂糖。

そして。

どこか霞がかる生温い懐かしさ。

トレモノで満たされた

世界でひとつだけの、こころのカタチ。

不思議とちからが抜けていく。

〝今なら。翔べるかも知れない。〟



-星空