三日月が滲んで見えたから
僕は咄嗟に耳を塞いだんだ。
身体の中を届かない筈の
悲鳴が駆け巡り、
酷く混乱した僕は
ただひたすら
深海魚になりたいと祈った。
あなたの意識の深い、深い
光の届かない海の底に潜んで、
ただひっそり泳いでいたかった。
あの日、キャンバスに落とされた
青い絵の具は
もう乾いてひび割れている。
朦朧とした意識に絡み付いた
冷たい影を払い除けようと
右腕が闇雲に空を切る。
確実に
イミガナイヨウデイミガアリ。
イミガアルヨウデイミガナカッタ。
そして、
僕だけが
残された。