とてもこの人には敵わない。
そういう人が僕には何人もいる。
若い時は、それがとても悔しく、
この人の、この感じ方、この感受性が欲しい。
その人の瞳で世界を覗き見てみたいと、
心底思って、嫉妬したりしていた。
45歳。この齢になって、
それも大分、間違っていたんだと
思うようになった。
もちろん、技術や心持ちは学べる。
それを学ぼうとすることは
とても大切な、人としての姿勢である。
でも、僕は、彼や彼女らには、
決して成れないのである。
彼や彼女らの感覚で
物事を全く同じように体験することは
不可能なのである。
たとえ、どれだけ心が寄り添って、
共感しても、彼等が感じた世界は
唯一無二の、彼等のものなのである。
そんなことより、大切なのは、
『積み重ね方』なのだと思う。
自分の道で出会う物事を
彼等に一歩でも近づけるように、
真摯に、彼等に学び…
信念を持って、地道に、素直に、
ナチュラルに…
真っ直ぐに、向かい合い…
『積み重ね』て、生きていくこと。
それが一番の近道なのかもしれないと
やっと思えるようになった。
結局のところ、
誰かに成るのではなくて、
『自分』が『自分自身』に成る。
そうすることしかできないのである。
そうすることによって、
自分らしい、唯一無二の感覚が開ける
のかもしれないと
最近、そう思えるようになった。
今頃になって気づくなんて、
よっぽど、才能がない気がするが、
45歳。もうどうしようもないのである。
ただ、
ささやかな祈りのような詩が
一編でも書けたら、それでいい。