茜空

そういえば。

そういえば。

君はいつも僕の何mか先を歩いていた。

その日も、ひなたにできた一本の影を両の腕で器用にバランスを取って綱渡りしてた。

それから君は急に振り返って、おどけた声で言った。

「バランスを崩して、踏み誤ったら。助けてくれる?どこまで落ちるかわからないけど。」

あのとき振り返った君の姿が忘れられなくて。

それなのに、あのときの表情が陰になってて、よく思い出せなくて。

苦しくて、ずっと胸に残ってるんだ。



-茜空